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運動障害性構音障害は脳神経を一緒に考える

■突然の病気…そして後遺症が!

運動障害性構音障害って?

 

ある日、突然の病気。後遺症が・・・。

Dr:「運動障害性構音障害ですね」

患者さん:「はぁ・・・。(運動障害性構音?・・・ってなんだ?!)」

 

運動障害性構音障害とは、専門用語で「ディサースリア(dysarthria)」と呼ばれる構音障害の中の一つです。脳のダメージにより神経の伝達がうまく出来なくなってしまうことによって起こるもので、一般的に後遺症と呼ばれるものです。

一重に運動障害性構音障害といっても、症状や改善方法は異なります。

 

 

■突然の後遺症…原因を知ろう

 

まずは、原因について解説をしたいと思います。

が、原因についての話をする前に、構音(発音)の仕組みを簡単に説明します。私たちは、脳からの命令が運動神経を経て各発声発語器官に伝わることで構音を行っています。

 

運動障害性構音障害は脳や神経、筋肉の病気によって、発音に必要な口などの動きが障害され起こるものです。これは、運動の指令をする場所や、指令を受ける神経に障害が生じてしまうことが原因です。

 

その原因で最も多いのは、脳卒中です。その他にも、事故などによる外傷が原因になることもあります。

 

 

■脳の場所で種類分かれる

 

運動障害性構音障害もいくつかの種類に分かれます。脳の機能は場所によって異なります。そのため、障害を受ける脳の部分によって構音障害の種類が変わります。

以下の7つに分かれます。

 

・弛緩性ディサースリア:末梢神経の障害

・痙性ディサースリア:中枢神経の障害(両側性の障害)

・UUMNディサースリア:中枢神経の障害(一側性の障害)

・失調性構音障害ディサースリア:小脳や前頭葉などの障害

・運動低下性ディサースリア:パーキンソン症候群などによる運動障害

・運動過多性ディサースリア:不随意運動などによる運動障害

・混合性ディサースリア:上記の症状が複数混合しているもの

 

人によって症状や病気の状態は異なるため、必ずしもこのタイプに当てはまるとは限りません。そのため、言語聴覚士による正確な評価が不可欠になります。

運動障害性構音障害といっても、損傷を受けた場所によって現れる症状が異なる。ということを知っていただければ幸いです。

 

 

■種類別の症状を知ろう!

種類ごとの特徴や症状を簡単に説明します。

 

・弛緩性ディサースリア:発声発語器官の筋力により、構音が正しく構音できない。声が弱々しくなってしまう。鼻に抜けたような声になってしまう。など

・痙性ディサースリア:発声発語器官の麻痺により、構音が正しくできない。話すスピードが異常に遅くなってしまう。など

・UUMNディサースリア:発声発語器官の麻痺により、構音が正しくできない。話すスピードが異常に遅くなってしまう。など(痙性ディサースリアに比べて重症度が低い)

・失調性ディサースリア:発声発語器官が不器用になることにより、構音が正しくできない。声の大きさが異常に変動してしまう。など

・運動低下性ディサースリア:ボソボソとした話し方になってしまう。声が異常に小さくなってしまう。話すスピードが異常に遅くなってしまう。など

・運動過多性ディサースリア:不随意運動によって構音運動ができなくなることにより、構音が正しくできない、話し方が努力的になってしまう。

・混合性ディサースリア:様々な症状が混在する

 

正しく構音ができなくなるといっても、原因や症状がタイプによって異なります。これらの症状の違いに応じてリハビリを進めていきます。

そして、脳神経と考えると自然と症状が予測できてきます。

 

 

■終わりに

運動障害性構音障害(ディサースリア)の原因やタイプについて、簡単にまとめました。

運動性構音障害は、それぞれ症状が異なります。患者さんの話にくさも人それぞれになります。どうしたら、より話しやすくなるか、よりストレスが少なくコミュニケーションが取れるのかを一緒に考えていきたいですよね。

 

運動障害性構音障害の対処法については別で、詳しく紹介していこうと思います。

 

 

参考文献

1)西尾正輝:ディサースリアの基礎と臨床 第1巻 理論編 p69~99,2006.